奇妙な同居人?

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 その日、白い綿毛のことを気にしつつも、仕事をこなした。  うちの会社は普通の会社だ。  昨今問題になりがちなブラック企業ほど酷い労働環境ではないが、普通に残業はしないと仕事が回らない程度には人手が足りていない。  恵まれているのは上司が良い人、という点だろうか。指示や指導は的確だし、よくあるパワハラみたいなものもない。勤務中であろうとタバコをめちゃくちゃ吸うので、タバコを吸わないこちらとしては煙たくなってしまうのだが、ある程度配慮してくれるだけ有り難い。  仕事は難しいし、ポカをやらかして怒られることも多々あるのだけど、なんだかんだ就職難と言われる時期に滑り込んだにしては業績も安定しているし、いい仕事に就けたと思う。  とはいえ。 「終電ギリギリまで仕事ってのは疲れる……」  疲れの籠った息を吐きながら家の玄関を潜るのが、すっかり日常になってしまった。  コーヒーを飲んでまったりしたいのだけど、夜遅くなってから飲むと寝つきが悪くなってしまう。初任給で買ったカット式のコーヒーミルを夜に使えた試しがない。  勤める前から幻想だと理解はしていたけど、たまには定時あがりで夜にのんびりコーヒーを飲む日があった欲しいものだ。  疲れの溜まった体を引き摺り、部屋に入る。  その視界の端に、白い綿毛が転がっていた。 
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