サーマルワンピース

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 開店してから五分位で一人の女性が御来店された。五歳位の男の子の手を引いた主婦だ。花柄のロングワンピースに、薄い水色のトップス。  これこそ、本当のキレカジと言うのだろう。年は三十代半ば位。ショートカットで薄めのメイク。  店長の着ている洋服を見て、少し見とれていた。そして目線を反らした。きっと綺麗でほしいと思ったに違いない。 「あの……」  その主婦は私に話しかけてきた。 「はい、いらっしゃいませ」  私は軽く頭を下げる。 「あの店員さんが着てるワンピースありますか?」  店長の方をチラリと一瞥しながら、遠慮がちに聞いてきた。 「あ、はい、少々お待ち下さい」  早速のお買い上げ。発売当日に、だ。サーマルワンピースの人気はつくづく凄いと、内心驚いた。
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