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「店長また荒れてるんっすか」  苦笑いを西野君は刻みながら、店長の顔を一瞥した。彼も店長が嫌いなのだ。  私は「まぁなぁ」と、適当に生ぬるい返事で流した。 「あんたも、気ぃつけてよ。あんたがドジやる度に、私いっつも、店長から怒られるんやから」  眉を顰めつつ、西野君の顔を見る。すると彼は「はぁい」と生ぬるい返事を私に返した。  新人の西野君は、入って二か月。主にメンズ担当だ。  メンズ服は男性店員が、基本的に担当する。が、男性店員の手が空いていない時は、女性店員が、男性客の対応もしなければならない。  それは、どちらも同じ。  女性店員の手が空いていない時、女性客が服を物色している際は男性店員が、声掛けをするようになっている。が、男性店員が女性客に声をかけると、大体が嫌な顔をする。  仕方がない事だが。  あまり、サイズや自分の服の好みの事を、女性としては見知らぬ男性に知られたくないだろうから。
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