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「ぃやっほー!」
「長野へ、いざ再びっ」
「9月でも暑いかな?」
バス2台に分かれ、二校の陸上部員が乗る。
8月とは違い、普通サイズの観光バスだ。わずかにA校の人数が少なく、女子部員は1台に集まり、俺の乗ってるバスにはC校の部員が乗ってくる。乗ってきたのは、3年生の8人と、顧問の計9人だ。やったね、英さんと同じバスだ。
俺は前の方に一人で座ってたから、隣に英さんが立ち止まった。
「おはようございます。C校の笹田です。隣、宜しいですか?」
「お、おはようございます。A校の日下です。どうぞ」
「ありがとう」
当然、ヤジも飛ぶ。
「久住先生、良かったね。もしかして、そのイケメン先生が恋人?」
ヒュー、ヒュー、と口笛が聞こえる。
先生は嬉しそうに応じてくれる。
「そうだよ。皆のお蔭で、今回の合宿に来れる事になった。ありがとー!」
その言葉に、C校の顧問は慌ててる。
「おい、もしかして…」
C校の陸上部員もヤジを飛ばしてる。
「良かったね、環ちゃん。碧ちゃんが居なくなって、ずっと寂しがってたからなあ」
C校の顧問は、ヤジを飛ばしてる部員を睨み付けてる。
「早朝にも拘らず元気な奴が居るもんだな。眠気と戦って欠伸をしてる奴もいるのに」
俺と目が合ってる。
げっ、もしかして俺の事か。
「す、すみませんっ」
「寝なけりゃ良いさ」
そのC校の顧問がマイクを持ってる。
「全員座ったか。それでは、自己紹介するぞ。まずは俺から。C校陸上部顧問の芳川環(よしかわ たまき)だ。これから4日間、よろしく」
前列から順番に自己紹介をしていくのだが、早速、俺は頭を小突かれた。
「大欠伸の助、欠伸君と呼ばれたいか」
「え…」
「眠いのは誰でも同じなんだよ。とっとと自己紹介しろ」
「は、はい」
英さんからマイクを渡され、俺は自己紹介をした。
「A校2年、短距離の日下夏生です。よろしくお願いします」
「別名、欠伸君だな」
「え、なにそれ」
「欠伸ばっかりしてるからだ。皆の自己紹介が終わるまでは起きとれっ」
「はっ、はい」
「英。欠伸野郎の瞼がくっ付いたら、抓って起こせっ」
「はい。頬っぺたや鼻を抓んでやります」
笑い乍ら英さんは即答してるが、俺は文句を口にしようとしていた。
環先生の言葉が、俺の文句を遮ぎる。
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