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ギノクォザー・ゼロア・アグメン。
ギノの本名を聞いた時点では、そこまで驚かなかった。ミレナが感じたのは、ギノはミドルネームや姓を持つほどの裕福な家庭に生まれていたのか、ということくらいだった。
「アグメンの名を聞いて、何も心当たりはないか?」
ニズの言葉にも、曖昧に首を傾げる他ない。ミレナには何も心当たりがなかった。
「有名な家系なのか?」
「……まあ、今は悪名高いと言った方が正しいかもな」
そこまで聞いてもわからない。ニズは神妙な面持ちのまま、真実を伝えた。
「アグメン家は、コンニル公国を治める貴族だ」
「コンニルの……?」
「俺、コンニルの不況の原因は話したか?」
ミレナは必死に思い出そうとするが、何一つ思い出せない。ということは、話を聞いていないということだろうか。ミレナが首を振ると、ニズは頷いた。
「約10年前、アグメン家の次期当主が突然姿をくらました。当時の当主が死んだ直後だと聞いている」
「……ということは、コンニルには今統治者がいないのか?」
ミレナの答えは正解だったらしい。ああ、とニズが返事をしてから続ける。
「年齢的に考えると、失踪した次期当主はギノの父親だろう。ギノが幼い頃にすでに国を離れていたとしたら、ギノが自分の正体を知らないのも無理はない」
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