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おどけたような口調で言ってみると、ニズが苦笑して呆れたように手を肩の高さまで上げる。
「お前のことだよ、ミレナ」
「……は、私?」
「何もしていない黒魔法使いを悪者扱いするな、ってさ」
「…………」
ミレナまで呆れて言葉を失くす。
(馬鹿なのか、アイツは)
ここに来る前に、トナ教徒の振りをしろとニズから口酸っぱく言われていた。教義に従わなければそうなることも、ギノは知っていたはずだ。
話せばわかるとでも思っていたのだろうか。だとしたら青い、青すぎる。ミレナは思わず頭を抱えた。
「……追放先は」
「馬車の向き的にコンニルだそうだ。面倒なことになったな」
ミレナは地理に詳しくないが、ここからなら、パリスナ王国よりコンニル公国に行く方が遠いことはわかる。陸路で行けるだけましだと思うべきなのか。
「馬車なら私たちも馬で行けば追い付ける。行こう」
「ダメ」
立ち上がったミレナを、ニズがたった一言で止める。まさか止められるとは思わなかったので、目を見開いて固まった。
「どうして? 今からなら国境を跨ぐ前に追い付く」
「追い付くだろうが、もう日は暮れてる。馬車も休むだろうけど俺たちも休まないと追い付けない。そうなるとまた野宿だ」
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