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ニズの言わんとしていることがわかって、ミレナは視線を床に這わせた。
「明日早くに出れば充分間に合う。国境を跨ごうが跨ぐまいが、ギノを無事に助けられる」
宥めるような口調が、逆にミレナの胸を締め付ける。
彼は、以前野宿をした所為で体調を崩したミレナを気遣っているのだ。
また体調を崩して、感情の昂りを抑えられないまま魔法が発動してしまえば、ミレナまで追われる身となる。そうなったときに一番苦労するのは他でもないニズだ。
「……ごめん」
「何を謝ってるんだ。ミレナに非は何もないさ」
──寧ろ非しかない。
ミレナが二人と出会わなければ、二人は今頃平和にミラ王国で暮らしていたのだ。こんな所まで着いてくる必要はなかったのに。
どうしてそんなに簡単に、ミレナのことを許すのだ。
「とりあえず飯だけ食いに行くか。ついでに騒ぎを見た客がいるといいが」
ニズが立ち上がって伸びをする。ミレナも、いつの間にか体が緊張していたことに気付いて、ぐるりと肩を回した。
ここに、もしニズでなくギノがいたらどうだっただろうか。ニズが追放されたとしたら、ミレナとギノは確実に直ぐに追いかけただろう。
ニズの頭の回転の早さや冷静さにはいつも助けられている。それがなんだか悔しくて、前を歩く彼の踵をわざと踏んでやった。
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