第4章

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「そうだけど、何。酒の相手なら間に合ってるよ」  彼女はそう言ってニズから視線をそらした。ニズはそんな態度にかまう様子もなく、彼女にしつこく話しかけ続けた。 「俺は酒の相手がほしいんだよね」 「……そこにいるのは連れじゃないの」  彼女の猫目がミレナを睨むように捕らえる。ミレナはどうしたらいいかわからないまま、彼女の目を見るだけに留まる。 「連れだけど、酒飲まないんだよね」 「そんだけ小さきゃそうだろうね」  彼女は口角を上げた。何に対する笑みなのかわからないが、ニズの話し相手になることに決めたらしい。彼の顔をなめるように見つめている。 「お兄さんたち、どこから来たの。この国の者じゃないでしょ」  小さく尋ねられて驚く。そんなに余所者だとわかりやすかっただろうか。ミレナが思わず口を開けたまま彼女を見ると、彼女の見た目には、何か既視感がある。 (金色のつり目……それに……)  視線を少し下げた時に見える豊満なそれ(・・)。ついでにニズの視線もそこを向いていることに気づいて思わず口を押さえた。 (ジロイカに……似ている)  ジロイカ――ミレナ達がパリスナ王国に上陸したときに出会った赤髪の女商人に、彼女はそっくりなのだ。
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