第4章

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「ジロイカという商人を知ってる?」  ニズが核心を突く。彼女は笑みを崩さないまま、 「私の姉」 と、簡単に答えを明かした。 「へえ、姉妹で行商とかしてるの?」 「そうね、似たようなものかな」 「じゃあ俺らの──具体的にはこいつのことも知ってるわけだ」  ニズが横目でミレナを見る。彼女もその視線と重ね合わせてミレナを見た。 「ミラからパリスナ、次いでここまで来た黒魔法使い」  今まで以上に小さな声で答えを確認される。姉ジロイカと情報は共有しているらしい。 「長身で灰色の髪の男と、金髪の少年を連れていたと聞いたけど。金髪は居ないのかしら?」 「そいつについては、君の方がよく知ってるんじゃないか?」  ニズが酒を持って彼女の方に傾ける。彼女は少し目を丸くして、どこか遠くの方を見た。 「最初からその情報が目的? 彼の行き先は知らないのね」 「知らないわけではないけど確証はない。君は一部始終を見てたんだろう」 「お兄さんたちより来るのが少しだけ早かっただけかもよ」 「『少し』の定義が俺とは違うみたいだ」  ニズが酒で彼女の前を指す。そこには酒が入っていたのであろう瓶が3本、空になって置かれていた。  彼女がミレナ達より随分前からこの酒場にいて、ギノの騒動を見聞きしていたことを証明するには充分な証拠だった。
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