第4章

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「お兄さん、割と顔はいいのに性格悪そう」  彼女が赤い舌を出してニズに向ける。対するニズは、彼女の言葉の前半だけ取ったのか、それとも後半を踏まえての皮肉でか、「ありがとう」と返した。 「金髪の子ね。入ってきたときはおとなしかったよ」 「まあ、大声で騒ぎながら酒場に入ってくる奴の方が珍しいだろうねえ」 「……少しは黙って聞け」  ニズは口達者な人を見つけるとすぐに突っかかる癖がある。癖というよりは彼の趣味か。こうして止めないと、いちいち口を挟んで話が進まなくなるだろう。 「わ、怒られた」  ちっとも反省していないような口振りで笑う。ミレナが呆れてため息をつくと、女もため息をついた。 「仲がいいのね。恋人?」 「お、そう見える?」 「そんなわけがあるか」  口を挟むのは、どうやらニズだけではないらしい。どうせ今日はもう追えないからいくら時間が掛かってもいいのだが、それにしても会話の進みが遅すぎて苛立ってしまいそうだ。 「おい、……お前」 「ああ、名前はシミラ」 「……シミラ。話の続きを」 「はいよ」  簡単に名乗ったシミラは、今度こそ正確に、ギノに起きたことを話し始めた。
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