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(……いや、それがまずいのか)
黒魔法使い――ミレナと旅をしていると知られれば、ミレナにも、そしてニズにも被害が及ぶかもしれない。ギノの身勝手で彼らを巻き込む訳にはいかない。
「おい、やめろ」
ギノが止めても、耳を貸す者はここにいない。わかってはいたが、無力な自分が腹立たしくて仕方がない。
女は立ち上がって、まずギノの方に向かってきた。彼女はギノの耳元に口を近づけ、息だけで言葉を紡ぐ。
「安心しなよ。お仲間は巻き込まない。売るのはキミ一人の情報だ」
「どういう……」
女はすぐに離れて、口元に人差し指を立てた。
更にわからない。ギノ一人の情報など、価値は何一つない。彼女が情報料を得るためのハッタリだろうか。
それにしては、先程の言葉が引っかかる。彼女は「お仲間」と言った。ギノに同行者がいること、そしてその同行者が特殊であることを知らなければ、今の忠告は意味を成さないのではないか。
「まあ、買ってやろう。金には余裕がある」
ギノが考えを巡らせている間に、旦那と女との間に契約が成立している。女は旦那から金を受け取ると、先程ギノにしたのと同じようにして、彼に情報を売り渡した。
「……何? こいつが?」
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