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情報を聞いた旦那の表情が一瞬で曇る。女は自信満々に頷いて、彼から離れた。
「信憑性はかなり高い。どう使うかは旦那次第ね」
女はまた笑って、カウンター席に戻ってしまった。
「……お前ら、そいつを外へ」
「旦那、どうするんですか?」
「コンニルに追放だ」
「コンニル……」
コンニル公国。この辺り一帯の不景気の原因を作った国だ。
『教義に異を唱えるのもナシだぞ』
『国から追放はあり得る。追放先はパリスナかコンニルになるだろうが――』
ニズの言葉が思い出される。コンニル公国に追放というのは、何か意味があるのか、それともニズの言うように追放先として妥当だからか。ギノには前者のような気がしてならない。
『真っ直ぐにトアイトンに行くには、何も問題を起こすなということか』
ミレナの言葉が刺さる。申し訳ない。ギノの所為で、彼女の目的を果たすのが遅くなってしまう。
このままでは、ただの足手まといだ。
「あの!」
ギノは先程情報を売った女に向けて声をかけた。彼女になら、任せられる。
「伝えてください。俺のことは放って、先に進めと」
彼女は少し間を置いてから、確りと頷いた。
これでいいのだ。これから先、何が起こるかわからないが、二人には会えるかもわからない。なら最後に迷惑をかけてはいけない。
(ごめん、さよなら)
勝手な別れの挨拶を、伝言として残さなかったのは、ギノの意地であり、願いだった。
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