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時は遡り、ミラ王国、港町ルレベルク──。
「なぁ、あいつ結局帰ってこなかったな」
「うん、黒狩りに行ったっきりなんだろ?」
男たちが酒場のテーブルを、神妙な面持ちを浮かべて囲む。
「親父さんもお袋さんも、たまったもんじゃないよなぁ……」
「もしかして俺ら、この酒場から退かなきゃいけなくなるかも?」
「かもな。ハンターなんてやってなきゃ行方不明なんてならなかったわけだし」
彼ら──傭兵団レボウンドの面々は、自分達の発言に勝手に落ち込んでいる。しかし、すぐに酒場の奥から女将の姿が現れて口をつぐんだ。
「ロダさん。お疲れ様です」
「うん、あんたたちもお疲れ。手掛かりは相変わらず?」
女将ロダが尋ねると、やはりレボウンドの面々は下を向いて黙るしかない。ロダもそれは承知の上で聞いたのだろう、ため息もつかずに、言葉を続けた。
「主人が心当たりがあるって、出ていったわ」
ロダがさらりと放った言葉に動揺が広がる。
「え! ノストさんが?」
「心当たりって一体?」
少なくとも、ノストとロダの息子の捜索に当たっていたレボウンドの誰も、そんな心当たりは何もなかった。
「悪い予感がするとも、賭けだとも言っていたわ。──私たちの故郷よ」
「故郷……?」
ここにいる者たちのうち、ロダたちの故郷を知っているものは誰一人としていなかった。
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