第4章

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*  馬車に揺られてどれだけ経ったのだろうか。酒場から連れ出されて、頭を殴られて気を失っているうちに馬車に乗せられ、目が覚めたらもう日は暮れていた。 「起きたな」  目を開けて最初に見えたのは、酒場で旦那と呼ばれていた男だ。寒くないのか、袖のない服から伸びる腕の筋肉は隆々と盛り上がり、この腕で殴られたのかと血の気が引く。 「お前、名前は」 「……さっき、買った情報にはなかったのか?」 「あったから聞いてる」  確認のため、ということだろうか。だとしたらここで偽名を使っても意味はない。観念して本名を名乗ることにする。 「……ギノクォザー」  答えると、旦那は厳つい顔をしかめる。 「フルネームで答えろ」 「え、フルネームって……」  つまり姓も名乗れと言うことだが、ギノに姓はない。そもそも姓を持つのは一部上流階級だけで、ギノのような一般人が持っているはずもない。 「俺は姓がない。誰かと勘違いしてないか?」 「いや、でもお前はギノクォザーと名乗ったな」 「それはそうだけど……?」 『売るのはキミ一人の情報だ』  酒場で出会った女はそう言っていた。その情報はギノの名前についてなのか。ギノに、姓があるというのか。 「お前の名前はギノクォザー・ゼロア・アグメン。コンニルを治めるはず(・・)の貴族だ」
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