第4章

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 ギノは、ミラ王国からパリスナ王国へ向かう船内で、「家が酒場を経営している」と言っていたはずだ。父親が経営者とすれば、コンニル公国の貴族であったことは隠されていた可能性が高い。 「失踪の理由はわかっているのか?」 「さあ……俺は知らない。コンニルの人間が知っているのかも微妙だな」  国勢などさまざまなことに詳しいニズが知らないならば、コンニル公国の人間にすら隠されているのかもしれない。  コンニル公国の人間が真実を知らないとすれば、不況に陥るのも無理はない。例えば代理の貴族を探しておくだとか、そういった対策は取れたはずだが、突然理由も言わずに失踪したとなると対策もとれない。  コンニル公国は、当主が死んだ途端、突然統治者がいない国へと成り下がってしまったのだ。 「いずれにせよ、ギノがアグメンの名をコンニルで出してしまえばどうなるか……」  ニズの言葉にミレナは考えを巡らせて黙る。  どうなるだろう。ギノは失踪した本人ではない。しかし、本来国を治めるべき一族であることは間違いないし、アグメンの名を憎む国民は少なくないはずだ。  きっとギノはミレナと同じように追われる身となる。
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