52人が本棚に入れています
本棚に追加
もしギノが、自分が貴族であることを自覚して、コンニル公国の統治者として生きたいと言ったら。
ミレナとの旅は、そこで終わりだ。
「……どうだかな。混乱の中のコンニルがアグメンにどう対処するか。やはり統治して欲しいと願うか、処刑かの二択ってとこか」
「もし統治者として認められたら?」
「今のアグメンにそんな力や金はないと思うが、もしあったとしたら普通よりいい暮らしは確実だろうね」
今のコンニル公国じゃ、どんな貴族も何も持ってないかもね。ニズはそう付け足した。
(ギノがいなくなる)
ミレナは小難しい話をなしにして、それだけを漠然と考えてみた。
巻き込んでしまったのはミレナだ。こうなってしまったのもミレナの所為だ。
だというのに、この感情はなんだ。
「──おい、ミレナ?」
「え」
「動揺してるのか? 布団燃えてるぞ」
「!」
ニズに言われて初めて、魔法が発動してしまっていたことに気が付く。布団の端に小さな炎が灯っている。すぐに氷の魔法で消して、なんとか少し焦がしただけで済んだ。
「……ふーん? お前もお年頃だなぁ」
「何を……」
「精々悩めよ、若者。まあ今日はさっさと休むが吉だと思うけどね。明日はすぐに出るぞ」
ニズはニヤリと笑いながらベッドに潜り込み、すぐに寝息を立て始めた。
ミレナはテーブルの明かりを消して、同じように眠ろうとしたが、疲れているはずなのにすぐには眠れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!