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その翌日も、ノストは町に下りた。目的は言うまでもない。
昨日会った辺りをふらふらと歩いて、姿を探す。が、すぐには見つからない。
(そもそもここにいるのかもわからないのに)
会えると思っていたのが甘かったのか。ノストは昨日彼女に案内されたルートを巡ってみる。
「あら……? ノスト様!」
幸運というものは案外近くに転がっているものだ。少し歩いたところの建物から、ロダの姿が現れる。彼女はノストの姿を認めると、すぐに駆け寄ってきた。
「またお会いできるなんて光栄です」
「ああ」
ここで「私もだ」と言えないのがノストの弱さである。適当な返事をして、風に揺れる彼女の長い髪を目で追った。
「今日はどちらに向かわれるのですか?」
「──特に、目的はない」
というか、既に果たされてしまった。昨日はただ外に出たくて出たくて、色々見て回りたいという気持ちが大きかったが、今日はそれよりロダと話がしたい。
それを、そのまま言葉にできたらいいのに。ノストが俯くと、ロダは首をかしげながら顔を覗き込んできた。
「あの、でしたら、歩きながらお話をしませんか」
「え?」
「ノスト様のことを、もっと知りたくなってしまいました」
あまりに素直なその言葉に、耳まで熱くなる。ノストはその体温を逃がすように、彼女の誘いを逃がさぬように、何度も首を縦に振って肯定した。
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