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「よし、じゃあ自己紹介」
掏摸男は手をパンと鳴らして、人の好い笑みを浮かべた。
「俺はニズ。職業はフリーの傭兵ってとこかな。よろしく」
掏摸男、ニズは簡潔に済ませて、手をギノの方に向ける。どうやら次はギノの番らしい。
「ギノクォザー。ギノでいいよ。傭兵団レボウンドに所属してる」
他に紹介することもないので、ギノは黒魔法使いに手を向けた。
「……ミレナ」
彼女はたったそれだけで、自己紹介を終えてしまった。
「アンタら、あっさりしてるね」
「ニズも大概だと思うけど」
「ま、そうだね。似た者同士ってことで?」
何か違う気がするが、返す言葉も見つからないので黙る。
「……あっさりしているのは、自分を縛るものが少ない証拠だろう」
ミレナが言いながら、船の方に向かって行く。
残されたニズとギノは顔を見合わせた。
「ああいうこと言う奴だったんだ」
「淡泊かと思ってたけど、人情に厚かったりして」
ニズは楽しげに笑いながら、大股で彼女を追った。
「縛るものが少ない……」
傭兵団に所属せず一人で傭兵として動くニズを、名しか告げなかったミレナを、引き留める者はいないのだろうか。
もしここにレボウンドの仲間がいたら、ギノを引き留めるだろうか。
ギノは少しの名残惜しさを胸に、彼らを追った。
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