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ギノたちが船に近づくと、筋骨隆々とした、肌の黒い大男が立ち塞がった。
「おう、船に乗りたいのか?」
「そう。3人、乗せて貰える?」
ニズが代表して答えると、大男は親指と人差し指をくっつけて円を作った。
「あればな」
「……なくはないけど。お前ら、払う気は……」
「…………」
「…………」
「……ないよなあ」
ギノとミレナが視線をそらすと、ニズは諦めたように袋を取り出した。現時点で、この3人の中で最も金に余裕があるのはニズだ。ギノは買い出しに使うはずだった分と自分の小遣い少々、ミレナは持っているのかすらわからない。
大男はニズから受け取った硬貨を数え、満足げに頷いた。
「毎度」
「確認だけど、この船はパリスナ王国行きであってるよな?」
「ああ。この天気なら10日程度で着くだろう」
「10日か……」
ニズはチラリと二人を見てから、うん、と頷く。
「なあ、その間船で働かせてくれないか? 路銀を稼いでおきたい」
「路銀? 兄ちゃん、割と持っているように見えたが、長旅になるのか?」
「育ち盛りの弟妹に窮屈な思いさせたくないんでね」
ニズが冗談めかして笑うと、大男は豪快に声を上げて笑った。
「ガハハ、それじゃ路銀じゃなくて食費じゃないか」
「旅の間に食うための資金だ。路銀だろ?」
「よく言うよ。いいぜ、働かせてやる。とりあえず乗れよ」
「助かるよ」
ニズが大男に連れられて船に乗り込む。ギノとミレナは言葉もなくあとに続いた。
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