第2章

4/20
前へ
/460ページ
次へ
 ギノたちが船に近づくと、筋骨隆々とした、肌の黒い大男が立ち塞がった。 「おう、船に乗りたいのか?」 「そう。3人、乗せて貰える?」  ニズが代表して答えると、大男は親指と人差し指をくっつけて円を作った。 「あればな」 「……なくはないけど。お前ら、払う気は……」 「…………」 「…………」 「……ないよなあ」  ギノとミレナが視線をそらすと、ニズは諦めたように袋を取り出した。現時点で、この3人の中で最も金に余裕があるのはニズだ。ギノは買い出しに使うはずだった分と自分の小遣い少々、ミレナは持っているのかすらわからない。  大男はニズから受け取った硬貨を数え、満足げに頷いた。 「毎度」 「確認だけど、この船はパリスナ王国行きであってるよな?」 「ああ。この天気なら10日程度で着くだろう」 「10日か……」  ニズはチラリと二人を見てから、うん、と頷く。 「なあ、その間船で働かせてくれないか? 路銀を稼いでおきたい」 「路銀? 兄ちゃん、割と持っているように見えたが、長旅になるのか?」 「育ち盛りの弟妹に窮屈な思いさせたくないんでね」  ニズが冗談めかして笑うと、大男は豪快に声を上げて笑った。 「ガハハ、それじゃ路銀じゃなくて食費じゃないか」 「旅の間に食うための資金だ。路銀だろ?」 「よく言うよ。いいぜ、働かせてやる。とりあえず乗れよ」 「助かるよ」  ニズが大男に連れられて船に乗り込む。ギノとミレナは言葉もなくあとに続いた。
/460ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加