第2章

6/20
前へ
/460ページ
次へ
 ミレナの姉。  ミレナと血が繋がっているということは、彼女もまた黒魔法使いということだ。どこかに定住しているのかもしれないし、ミレナのように逃走生活を送っているかもしれない。あるいは……。 「……生き別れてから、まだそう時間は経っていない。生きてはいる、と信じている」  ギノの思考を読んだかのような発言に、ぎくりと肩を震わせる。ミレナが信じているのに、ミレナの姉と何の関係もないギノが生を疑ってはならない。 「と、なると……その姉さんが居る可能性が一番高いのは生き別れたときにいた場所か?」 「だと思う」 「どこ?」 「……トアイトン帝国」 「えっ」  ギノは思わず声を上げた。ニズが平然としているのが信じられない。  トアイトン帝国は、黒魔法研究所がある巨大国家だ。黒魔法使いの首を集め、その首を持ってきたハンターに賞金を出すのもこの機関。つまり、トアイトン帝国は他の国家よりも黒狩りが活発に行われている。  そんな国家で、黒魔法使いが生き延びるなどできるのだろうか。再び出てきてしまった疑念を首を振って払い飛ばす。 「言いたいことはわかる。でも実際、私は10年以上トアイトン帝国で生活していたんだ」  冷静なミレナの口調が少しだけ荒くなる。ギノを見るその瞳は、最初に見たときよりも澄んでいるように感じた。
/460ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加