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「じゃあとりあえずの目標はトアイトンか」
ニズが腕を組みながら確認すると、ミレナが頷く。
「……ここまで、行き先も不安定なまま付き合わせて悪かった。ミラ王国からトアイトン帝国まで遠いのはわかっている。パリスナ王国に着いたら別れよう」
ミレナは二人に頭を下げた。その言葉の意味を捉えかねて、微妙な間が開いてしまう。
「……え、パリスナに着いたら、そこから一人で行くってことか?」
「そうだ。もともとお前たちは私に巻き込まれただけの被害者だ。なんなら出港前に船を降りてもかまわない」
ミレナはあくまで淡泊だ。
ギノはない頭で考えた。ミレナの言っていることに間違いは何一つない。でも、ギノが船に乗ったのは、彼女について行こうと思ったからだ。彼女が、黒魔法使いが、ギノが思っている悪者ではないと思ったからだ。真実を知りたいと思ったからだ。
文字通り乗りかかった船の中、ここで引き返すことなんてできない。
「俺はついて行く。トアイトンまで」
「なぜ?」
「ミレナのこと、悪者だと思えないからだ」
単純な理由だと、そんな理由で国を出るのかと呆れられるかもしれない。それでも、ギノにはそんな言葉しか出てこなかった。
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