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「変な奴だ」
そこで初めて、ミレナの笑顔を見た。それは、ギノの同行を認める笑顔だと、思っていいのだろうか。
「ニズは?」
ギノが尋ねると、彼は年甲斐もなく頬を膨らませて不満を表していた。その表情の意味がわからなかったのはギノだけではなかったようで、ミレナも眉をひそめている。
「あのなあ、運賃払わせといてここで別れるはないだろ」
「……あ」
「ギノも。ここで降りるなんて言ったらぶっ飛ばしてたからな?」
それもそうだ。掏摸の報酬とはいえ運賃すべてを払わせておいてここから帰るなんてあり得ない話だ。
「それに俺は、船に乗るって決めたときから、ミレナについて行くって決めてたよ」
ニズが立ち上がってミレナの前に立ち、彼女の額を弾いた。
「痛い」
その声は全く痛そうに聞こえないが、額を抑えているところを見ると、言葉は本当らしい。
「でも本当にいいのか? このままトアイトンまで、私がまた魔法を人前で使ってしまわないとは限らない」
ミレナが最終確認というように聞くが、ニズは笑ってまたベッドに腰掛けるだけ。
「なあ、それ」
一方のギノはミレナの言葉を聞いて、最初に彼女を見たときと同じような感覚に陥った。
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