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「よっしゃ、勝ち!」
「ちょ、待った!」
「待ったナシだ、男らしくねえぞ」
机上に散らばったカードを、向かいに座った男が手際よく片付ける。少年は自身の金色の頭を掻きむしりながら項垂れた。
「おかしいな、途中まではよかったのに」
「ギノは策を考えてなさすぎるんだよ、ほら」
男は、少年――ギノに向けて硬貨を投げて寄越す。ギノがそれを片手で受け取ると、男はふっと笑ってみせた。
「買い出し。いってこい」
「……行ってきます」
勝負で決まったことは仕方ない。ギノは重い腰を上げて立ち上がり、酒場を出た。
晴れた空。丘の下には海原が広がる。吹き付ける潮風の匂いには何年暮らしても慣れない。港町ルレベルクの外れにあるこの酒場からは市街地は少し遠い。だからこそ、平和慣れした傭兵団レボウンドの仲間たちはこうして買い出しに行くのを嫌がり、当番を勝負事で決める。
それにしても、ギノが当番になることが多いのは、ギノが弱いからなのか、仲間たちが強いからなのか。
(策、か――)
そんなことを言われても、ギノは考えるより先に体が動いてしまうタイプだ。先程のカードゲームだって、深く考えたかと言えば嘘になる。とりあえず打てる手を打った、という感じだ。
「考えたって仕方ないことだってあるだろ」
ギノは道端の小石を大きく蹴って、市街地へ向かう歩を早めた。
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