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「……まあ、ギノはまだ若い。止めもしないし勧めもしないさ。自分で迷って決めればいい」
老婆は簡単にそう言って話を終わらせてしまう。話を振ったくせに、無責任な終わらせ方だ。ギノは再び棚を向いて傷薬をつかむが、情けないことに手汗はまだ引いていない。
手を服に擦り付けて水分を取り、手を伸ばした、その瞬間。
カーン!
鈍い鐘の音が外から入り込んできた。反響や減衰がほぼない。ここからかなり近いのだろう。
扉の外に首を向けると、武器を構えた男たちが走って鐘の音の方向に向かっていくのが見えた。その中には、レボウンドの仲間の姿もある。
この鐘の意味を知らない者は、もはやハンターを名乗ることすら許されない。
「黒魔法使い……!」
ギノの手は、拭いたばかりだというのにまた湿り気を帯びてくる。足はガタガタと震え、老婆の方を向くことすらままならない。
「ギノ。扉を閉める。ことが収まるまでここにいなさい」
老婆はいつの間にか立ち上がって、店の扉に手をかけている。
「……俺も行く」
「ギノ?」
「俺だって、俺なりの覚悟をしてハンターを名乗ってるんだ!」
ギノは腰に提げた剣を確認すると、震える太ももに活を入れて、人の流れに沿って走り出した。
ギノを止める老婆の声は、もはや聞こえなかった。
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