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家族に見付かったら、きっと「彼氏?」だなんて訊かれて台無しになってしまうから、あたしは放課後、コッソリ斉藤くんを家に招待した。お婆ちゃんの代からの古い一軒家は、壁が薄い。ひそひそと、声をひそめるように話す。
「斉藤くん、連れてきたよ。この子が、うちのおはぎ」
抱っこは嫌がるから、しなやかな胸を抱えるようにして部屋に連れてくる。
「わあ。クロそっくりだ」
硬派な斉藤くんは学校でも、普通の男子がするくだらない猥談や悪ふざけをしない。だから、こんな風にくしゃっと破顔する所は初めて見た。
へええ……普段は格好いいのに、笑うと可愛いんだ。
そんな風に見とれていると、斉藤くんはおはぎを膝に乗せた。
「あ……」
おはぎはとにかく、抱っこが大嫌い。引っかかれてしまうかもと止めようとしたけど、何とおはぎは大人しく斉藤くんの膝の上に乗り、顔をよく見るように顎を上げた。
「あ、オスなんだ。クロは、メスだった」
「そうなんだ」
おはぎは黙って、斉藤くんの顔を見上げている。その喉を、長い指がかいた。
「可愛いな~」
「可愛いのは、斉藤くんだよ」
「え?」
「あっ! な、何でもない、ごめん!」
いけない、いけない。心の声が漏れちゃった。
「中島……もしかして猫、ダシにした?」
「え?」
今度はあたしが問う番だった。
「ひょっとしてだけど……俺の事が好き、とか」
え、え。どうしよう。身体中が心臓になったみたいにバクバクする。隠そうとしても、耳の先まで赤くなってしまう顔色は、隠しきれなくて。
えーい、こんなチャンス、もうないかも! 告白しちゃおう!
「……うん、そう。あたし、斉藤くんの事……ずっと、好き、なんだ。だから猫好きな所も一緒で、嬉し……」
「最低だな」
「……えっ?」
さっきまで緩んでた猫目が、冷たく鋭いつららのように、あたしを射貫く。
「動物をダシにして誘うなんて、最低だな。スマホの画面見えるようにしたのも、わざとか? ハッキリ言ってキモい。俺、帰る」
事態が理解出来ずに呆然としてるあたしを残して、斉藤くんは立ち上がった。その膝の上から、ピョンとおはぎが飛び降りる。
普段、あまり猫らしく鳴かないおはぎが珍しく、ひと声にゃあと鳴いた。
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