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「その伝説には続きがあるぞ」
定期巡回の途中で寄った村の酒場。三人で食事をしていたら、いきなり隣のテーブルの客が話しかけてきた。俺は口に運びかけたフォークを皿に戻し、そいつに目を向けた。
歳の頃は六十をいくつか越えたところか。年季が入って何色か分からなくなったマントを羽織り、白髪混じりの長髪を後ろで束ねている。
「魔物は三百年周期で復活しようとするのだ」
「三百年じゃあ、別に俺たちが心配することねえな」
仲間のケンが俺に眼くばせしてニヤッと笑った。明らかにこの老人を馬鹿にしている。
「その三百年目が今日だとしたら、どうだ」
そう言いながら老人は笑った。しかしその目は少しも笑っていない。よくよく見れば老人は不思議な顔立ちをしている。この国の人間ではないようだ。
「世界にSakur-aが何本あるか知っているか?無論、生きている個体でな 」
「百本ぐらいですか?」
老人に興味が湧いてきた俺は、ケンが挑発的なことを言う前に口を挟んだ。
「この国の個体を含めて三本しかない」
「それはずいぶん少ないですね」
「ウム。そしてまた三百年が過ぎて……」
老人の声が小さくなり、言葉の後半は聞き取れなかった。
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