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*** 朝、同居人が出かける気配を感じて、朝日向はのろのろと起きだす。 本音としてはまだ寝ていたいところだが、そうできない、いや、そうしたくない理由が朝日向にはある。 半分寝たまま朝日向が部屋の扉を開けると、ちょうど深影が出かけるところだった。 「……いってらっしゃい」 玄関先の背中に声をかけると、驚いたように振り向いた深影と目が合う。 「いってきます……朝飯、置いといたから」 あと今日遅くなるから、と付け足した深影に、寝起きで回らない頭で朝日向は呟く。 「…………今夜は、私に依頼はきていませんが」 「場所が違うからな」 出かけるなら戸締りしろよ、と言い残して外出した彼を見送り、朝日向は一旦部屋に戻る。 それからのんびりと洗面所で身支度を整え、深影が用意した朝食をいただく。 朝は、いつも深影が朝食を作ってくれている。 朝日向は、低血圧で寝起きが悪いからだ。 朝日向としては、別に朝食くらい抜いてもかまわないので、放っておいてくれてもいいのに、と思わなくもないが、同居人である深影からすると、それは許せないという。 深影が毎朝律儀にも二人分朝食を作ってくれるので、断る理由もない朝日向としてはありがたくいただいている。 もちろん食費は払っている。 ちなみに、リクエストをすれば文句は言われるが、たいてい彼は聞き入れてくれる。 あなたは私のお母さんですか、と時々突っ込みたくなるほど、彼は意外と世話焼きだ。 ご丁寧にも、昼食用にとサンドイッチまで用意してくれているところなど、仕事に没頭すると食事をとらなくなる朝日向のことをよくわかっている。 というよりは、以前、食事を抜いて部屋の前で行き倒れたことがあるからだが。
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