シチューごはん

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「僕がやれる範囲で教えますから」 「でも、私……包丁を手に取ったことすらないのよ」  もじもじとする彼女は、どこか新鮮だ。  温めたフライパンに、油をひいて、人参とじゃが芋に火を通す。  その間に、玉ねぎを切って炒めることにした。 「じゃあ、とりあえず包丁を持ってみてください」  え、と唇から戸惑いの声。ちらちらと、助けを求めるような目配せをする。包丁を手に取ること自体は、できるだろう。と思っていた俺の前で、彼女は、包丁を逆手に持った。 「――持ち方、違う」  殺人鬼かよ。 「え?」  え、じゃねーよ。  初手で面食らわされた。先が思いやられる。  事の重大さを思い知って、俺は火を止めて、彼女に注意を注ぐことにした。
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