桜の伝説

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町の中央を流れる川の川裾に 桜の木がぽつんと1本立っている。 樹齢100年の立派な桜の木だ。 若者の間では、恋が実る桜の木 「恋桜」と呼ばれている。 古くからの伝説の木だ。 この桜の木の下で告白すれば 芽生えた恋もきれいな花を咲かせ 二人は結ばれるというものだ。 もちろん若者だけじゃなく 大勢の人が桜の花を心待ちにしていた。 この桜の満開の季節は 土地の人達の心の原風景 そのものだった。 ここ何十年の間に伝説は 若者の間で少しずつ 変化していった。 今の主流はこうだ。 まだ人々が目覚めぬ朝靄の時間に 桜の木の一枝に赤い紐をくくり付ける。 すると桜の精がその紐で 二人を結んでくれるというものだった 桜の精は心底、面倒くさいと思った。
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