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「なあ、そろそろこの同居、やめにしないか?」
突然、有田裕吾がそんな事を言い出した。
「元々ここは定員一名の筈なんだ。もう何年もそれをみんなで共有している訳だから……とっくの昔にキャパオーバーなんだよ」
「確かに。いい加減共用ってのも、うんざりして来てたのよね。そろそろ潮時なのかしら」
伊万里陽子も納得の意見を表した。
「ええっ! ボクなんてこの間来たばっかなのに! そんなのずるいよ!」
「そうだよ。同居をやめたら、あぶれた奴らは何処に行きゃいいんだよ?」
久谷拓巳と鋏勇次は異を唱える。
「そ、そもそも、どうしてこんな大所帯になったのかなぁ……? 定員一名……もともとは僕だけの筈、だったのに……」
ぼそりとした呟きが空間の隅っこから漏らされた。
ピキッ! そんな音を立てて一気に凍る場の空気。
まさか聞こえるとは思わない程の声量だったにも関わらず、この気弱な清水陸斗の一言が、ここから始まる熾烈な居住空間争いの一番のきっかけとなった。
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