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 籠に鳥を入れるのは、少女が最も嫌う行為の一つだった。  カラスはそれを聞いて怒ったように羽ばたいて、部屋をぐるぐると旋回する。  そんなに君が怒らなくても。少女が笑う。  しかしカラスは怒ったようだ。ギューンと向きを変え、鉄格子に突撃する兵士の様相で空へ飛び立ち、次の日の夕方になっても帰ってこなかった。  少女はそれをつまらなそうに待った。カラスが持ってきた石で、日が暮れた回数を壁にガリガリ三つほどつけたところでカラスは帰還。  戻ったカラスは羽根もボロボロで、よくこんなものを持ってきたものだというような、大きな布をくわえている。  いつものようにカラスにパンくずをやり、今日は喉もとても乾いていたようなので、水も飲ませてやる。  一通り食べ終えるとカラスは少女の膝の上でしばし休んだ。少女は羽根についた木やゴミクズを取ってやる。  少女は座ったまま、カラスの持ってきた大きな布に包まって眠った。  少女が目を覚ました時、カラスはいなかった。  今度は壁につけた傷が五つを越えても帰ってこなかった。  その間、少女はもらった黒い布に包まって眠った。  カラスのまとう、葉っぱの匂いやひなたの香りがした。  七つを越えた時、カラスは戻って来た。  今度は硬い部品のようなものが二つ。  いつものように世話をしてやり、一体どこでなにをして、何故こんなものを持ってくるのかを問うたが、カラスは言葉が通じないのをいいことに何も言わない。  少女はそれに対してありとあらゆる意義を申し立てたが、カラスは聞く耳を持たなかったので、くちばしの横のあたりにある耳に向かってまたありとあらゆる意義を申し立てる。  それでもカラスは暗い夜のように何も語らずだったので、また少女は自身の膝を布団に、カラスをしばしの休息へ導く。  三回目のカラスの出立は、少女も一緒に起きて、何も言わずに見送った。
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