【Hard edge blues】

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【Hard edge blues】

「断鉄の総助?」  堀田甚蔵(ほったじんぞう)は眉間に皺を寄せて厳しく声を発すると、側に置いてあった刀をやにわに手繰り寄せた。 「うむ。三条大橋で斬られた坂上(さかがみ)は、恐らく奴に……そう、断鉄の総助に斬られた、と」  米沢藩の脱藩浪士、篠崎悠九郎(しのざきゆうくろう)は目前で頼りなく輝く行灯(あんどん)を見つめると、言葉を慎重に選んで語る。 「断鉄の総助。一体、何者なのだ、奴は。新撰組や見廻り組に与(くみ)しているという話は聞かないがな」  長州藩の藩士、倉沢拓馬(くらさわたくま)は畳を爪でむしり苛立ちを隠さず昂って言った。 「確かに。だが、奴の凶刃(きょうじん)の犠牲になっているのは、薩摩や長州の人間ばかり。佐幕派の人間である事は間違いないと思うが」  篠崎は顎を擦りつつ答える。 「坂上もそうだが、富小路通で斬られた同志の高柳(たかやなぎ)も腰まで真っ二つにされていたな。やはり示現流の使い手だろうか」 「うーむ、薩摩の剣術が我々に仇をなしているとすれば皮肉ではある。それにしても鉄をも一刀する撃剣にして断鉄とは、驕った異名だな」 「新撰組連中だけでも厄介だというのに、よくもまあ面倒な輩が現れる」     
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