再会

15/19
前へ
/19ページ
次へ
「んじゃ、ちょっとベランダ行かね? この季節、夜風が気持ち良いんだよな。景色も綺麗だし」  私は異様に秀人と一緒に景色が見たくなって誘ってみた。 「夜風に景色? 美咲、熱でもあんの? キャラじゃないっしょ」  秀人はおどけた様子で私をからかう。 「殴られたい?」  再び怒気を含んだ笑顔を向けて拳を握る私。 「いえ、すみません。行きたいです」  秀人は慌てた様子で煙草を手に取って立ち上がった。顔が私をからかった時の表情から変化がなかったけど。  ったく。調子の良い奴め。などと思いながら、私も煙草と灰皿を持って後に続く。  ベランダに出ると、本当に夜風が気持ち良い。そして五階から見える景色はとても綺麗で、偽りに満ちたこの世界を、真の輝きで照らしていた。 「本当に綺麗だな」  秀人が街を見下ろして言う。 「だろ? 私、この景色好きなんだよな」 「俺も。好きんなったよ」  私の方を向いて言った秀人の顔が近くて、不覚にもドキッとしてしまった。  好きになったのは景色の事って分かってんだけど、この至近距離で真顔で言われたら、誰でもドキッとするだろう。  しかも相手は秀人。異性としては意識してないけど、私は友達として心から信頼してるし大好きな人。  言ってみれば同性の親友が茜なら、異性の親友が秀人って感じかな。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加