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秀人の指が示している先は私の部屋の右隣り。
ええ? これまた偶然に隣なんですか。そうですか。もう驚きを通り越して何も言えません。
「偶然って重なるよな」
妙に冷静になった私。
「だな」
秀人も冷静に返してきた。
私は玄関の鍵を開け、中に入るよう促した。
「どうぞ、上がって」
「おっ邪魔しま~す!」
秀人はテンション高めにそう言うと、スタスタと行ってしまう。
おいおい。ここは私の部屋、つまり、仮にも年頃の娘の部屋なんだぞ? 何の躊躇いもなく、ズカズカ上がってかないでくれ。
という脳内での突っ込みが届くはずもなく、秀人は一番奥の左手のドアまで行ってしまった。
そのドアの先がキッチン兼、リビング。部屋の造りが一緒だからこそ成せる業である。
ドアを開けて、目の前から右手奥にかけてリビングがあり、ドアから見て少し左手にあるカウンターを挟んでキッチンという構造になっている。
リビングの床はフローリング。部屋の中央に白い羽毛の絨毯を敷いて、その上にガラス製のテーブルを配置。そして、その前に空色の二人掛けのソファが一つ。
インテリアどころかテレビや時計さえ置いてないのは、切り詰めた節約生活を送ってるから。
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