2人が本棚に入れています
本棚に追加
「茜? 私は茜の泣き顔を見るのが一番辛いんだよ。だからさ、笑って? 顔を上げてさ。茜は何も悪くないんだから」
耳元で囁いた私の言葉は、しっかり茜に届いたようで、泣き濡れた顔を上げて小さく笑った。
その笑顔が痛々しくて、また胸が痛んだ。
「美咲……。本当にごめん」
茜は声にならない声を、絞り出すようにして呟いた。
私は茜の顔の前で両手をパシッと合わせてから笑顔で返す。
「だから茜が謝る事、ないんだってば。ほら、ずっと泣いてっと、目が腫れちまうぞ? 洗面所で顔洗ってきな」
わざと軽い口調で言い、場の空気を変えようとした。
そして半ば強引に洗面所に行くように勧めたのは、唯に頼みたい事があったからってのもある。
最初のコメントを投稿しよう!