優しい真実

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 茜は力無く「うん」とだけ返事をして立ち上がり、リビングを出た。  洗面所は、今居るリビングを出て廊下の左手の一番奥、つまり玄関から一番近い場所にある。その手前がバスルームで更にその手前にあるのが寝室だ。  茜がうちに来るのは初めてじゃないから、洗面所の場所は知っている。私は茜が洗面所に入ったのを確認して口を開いた。 「学校での事だけど、茜の事、よろしくな」  唯は私の言葉の意図が分からなかったらしく、キョトンとしている。 「どういう意味?」 「いや、だからさ。噂って簡単に消えるもんじゃねえし、私と一緒に居ると茜まで悪口を言われるっつーか、最悪イジメに発展する可能性もあるじゃん? だから学校では私と一緒に居ない方が良いと思っ……」  そこまで言った時、突如、背後からの声が私の言葉を遮った。もちろん話しているのは茜。  どうやら話を聞かれていたらしい。
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