優しい真実

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「あっ、あの、こんにちは。私達はもう帰りますから気にしないで下さい」  慌てた様子の茜が、気を遣っているのか帰ると宣言する。確かに茜からすりゃ話は終わってんだろうけど、このまま帰らせたら学校で大変な事になる。 「私達? いや、とにかく俺が出直すんで良いっすよ。ゆっくりしてって下さい」  秀人は一瞬、茜が複数形を使った事に首を傾げていたが、すぐに話題を戻して自分が出直すと言い張った。 「――茜、とにかく早く顔を洗ってきて。秀人も、出直さなくて良いから上がって」  私は、そんな二人の会話を遮って、多少強引に四人で話す方向に持っていく。  茜は「うん。こんな顔じゃ帰れないからね」と困惑が混じった笑顔を浮かべて洗面所に入る。  茜は思いっきり勘違いしてるけど、私は茜を帰らせる為に言ったんじゃなくて、初対面の秀人に泣き顔はあまり見られたくないだろうと思って言ったんだけどな。 「おい。マジで俺が出直すから、ゆっくりしてもらってくれよ」  どうやら秀人も勘違いしているらしい。 「いや、帰らせる気はねえよ。四人で話したくてさ。とにかく説明するから秀人も上がってくれよ」  私はひとまず秀人を引き止めた。
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