疑惑

7/7
前へ
/7ページ
次へ
『わりぃけど今日は無理だわ。明日にしてくれ』 「何かあんのか?」 『……予定はねえけど、なんか疲れたからもう寝る。それより秀人は何があったんだよ?』  一瞬の沈黙の後、なんとも歯切れの悪い返答をする美咲。やっぱ何かあんじゃねえかよ。 「美咲。正直に答えろよ? 今日バイトで何があった?」  俺は謝る事を後回しにして、思い切って気になってた事を聞いてみた。今を逃すと、美咲は答えないような気がしたから。 『へっ? だから何もねえって。秀人、気にしすぎだよ』  明らかに動揺した声。いや、普通なら気付かない些細な違いかもしれない。でも、付き合いの長い俺には分かってしまった。  美咲は俺に何か隠してる。そしてそれは十中八九、バイトの香奈って子が関係してる。 「美咲。疲れてるトコわりぃけど、今からそっち行くわ。夜メシはカレー持ってくから」 『いや、ちょっ……』  美咲の返事も聞かず、俺は電話を切った。  即行でカレーの材料を袋に詰めて部屋を出る。  この前の木曜以降、毎日入ってる美咲の部屋。でも今日はやけに扉が厚く感じる。  俺は気持ちを落ち着かせてインターフォンを鳴らした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加