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「いやぁ、しかし流石美咲だな。今日の授業の教科書、世界史と数学しか持ってねえとは」
教室のある棟とは違う棟にある化学室に向かう渡り廊下で、秀人は私を見てシミジミと言う。
既に教科書は唯から借りてきている。
「何がどう流石なんだよ?」
私はわざと不機嫌に返した。すると茜が苦笑しながら口を挟む。
「ハハ。美咲は基本的に授業中、寝てるからね。バイト、無理しすぎなんだよ。あっ、てか突然ごめん。ちょっと先に行ってて」
茜は第二棟に着くと、トイレのある方を指差して小走りに去って行った。
茜が去って行ったのと入れ違いに、目の前にある階段の一階から誰かの話し声が聞こえてきた。徐々に近づいて来る声は段々と明確になり、どうやらバカ西と立川だという事が明らかになる。
良いのか悪いのか、なんとも絶妙なタイミングだな。
「あっ、おめえら。ちょうど良いとこで会った。今、おめえらの事どうするか話してたとこなんだよ。んで、昼休みに屋上で待ってっからよ、二人で来い。バックレんじゃねえぞ」
バカ西は嫌らしい含み笑いを浮かべる。
「転入早々わりぃけど、ちょっと顔貸してな」
立川は、すれ違いざまに秀人の肩をポンポンと叩いて去って行った。
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