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二人は化学室とは違う方向、教室がある棟に向かって歩いて行った。
「やっぱ来たな。まっ、こういう事は早めにケリつけてえし、丁度良かったよな。予想通りっつーか予想以上っつーか、来んの早かったな」
秀人は二人が去って行った方を向いたまま苦笑している。
「ハハ。確かに。あいつ相当キレてるっぽいからな」
私も釣られて苦笑した。本当、奴の単純さ加減は、呆れるを通り越して笑うしかねえ。
そんな事を考えながら視線を前に戻すと、茜がトイレから出てきた。
「あれ? 先、行ってなかったんだ。何してるの?」
茜は不思議そうに首を傾げて聞いてくる。
つか、数十秒早かったら茜に聞かれてたよな。むしろトイレに行かなきゃ一緒に居た訳だ。あんなん聞かれたら余計な心配かけるだけだし、多分止めるだろう。茜も一緒に呼ばれてたかもしれない。居ない時で良かったな。
「茜を待ってたんだよ」
本当の事など言える訳もなく、咄嗟にごまかしてしまう。
「そっか。ありがとう。じゃあ行こっか」
嬉しそうにニッコリと微笑む茜を見て、咄嗟に出た虚言に対して後ろめたさを感じながらも、笑顔を返して、茜に続いて化学室に向かった。
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