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「こういう時に来てくれりゃ良いんだけどな」
立川が西の空に浮かぶ太陽に目を細めて呟く。
「だよな。もう面倒臭せえから早く来てくんねえかな」
秀人はぼやくように言った。
「確かに。でもまあ、そう上手くいかねえだろ」
私は笑いながら言ったけど、新たな不安が芽生えていた。
いつどんな相手が何人で来るか想像もつかないが、男数人に束になってかかって来られたら、とても太刀打ち出来ない。
別にそれが怖い訳じゃない。
私は別にやられたって良い。秀人たちは滅多な事じゃやられないだろうし。ただ、一人で居る時にやられたら、その後、抵抗する気力も体力も無い時に、何をされるか分からない。
それが凄く心配だった。
みんなに余計な心配かけたくないから口には出さなかったけど、有り得ない話じゃないと思う。私が女だからって、女が来るとも思えねえし。
幸いにも話を聞いて以来、秀人が大抵は側に居てくれる。多分、心配して故意に居てくれてるんだと思うけど。
「美咲? 着いたけど、ボーッとして、大丈夫か?」
秀人が心配して顔を覗き込んできた。
秀人の濁りのない綺麗な瞳を見て、吸い込まれそうになる。やっぱり私は秀人が好きだ。こんな時にまで再認識させられた。
そして秀人が居てくれるから大丈夫だって思えた。
「ああ。大丈夫だよ」
事態は数秒前と何も変わってないのに、なんだか気持ちが楽になって自然と笑顔になる。
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