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「うちの親、離婚しててさ。母親と一緒に住んでたんだけど、その母親がちょっと不安定な状態で……。んで、色々あって父親とはたまに連絡取ってたんだけど、家賃だけなら出してやるって言ってくれて、家を出る事にしたんだよ」
事実がちょっと捩曲げられてるけど、嘘ではない。さすがに母親が飲んだくれて暴力振るってきてたとか、言えねえしな。厳密に言や他にもあるけど。
それ知ってんのは秀人と茜だけか。親父にも詳しい事は話してないし、話すつもりもない。
「そうなんだぁ。大変だったんだね。ごめんね、変な事聞いちゃって」
唯は心底申し訳なさそうに肩を竦めた。
「良いよ。別に気にしてねえし」
私は軽く微笑んで答えた。
そりゃ、あの頃は普通の家庭に生まれたかったとか思ったりもしたけど、今は今で幸せだから、それで良いって思ってる。
そもそも秀人はもっと大変だった筈だ。それに比べたら私なんて大変だったうちに入らない。
だから私は秀人の事、出来る限り支えてあげたいって思って……、ってそうじゃねえだろ。何考えてんだ、私は? 重症だな。
「洗いもん終了。戻ろっか」
私は自分の気持ちをごまかすように唯に話し掛けた。
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