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マンションに着き、秀人の部屋の前で鍵が開けられるのを待っている私と立川。
「そういや秀人の部屋入んの初めてなんだよな」
私は自分の部屋と同じ造りのドアを眺めながら呟いた。
「ああ、そういやそだな」
秀人は鍵を開けたドアを開く。
「えっ、何? お前ら隣に住んでて部屋入んの初めてな訳?」
立川が驚いた様子で口を挟む。
「まあ、いつも美咲の部屋ばっかだったしな」
秀人は一番最後に部屋に入り、玄関の鍵を閉めた。
「へえ。俺も秀人の部屋泊まれない時は美咲の部屋に行こうかな」
立川は何故かニヤニヤして秀人を見ている。
「アホか」
私は苦笑いで一言だけ返した。
「何で秀人は良くて俺はダメなんだよ。俺も美咲の手料理食いてえな」
立川は相変わらずニヤついている。
秀人はと言えば、興味なさそうに無言でリビングの前まで歩いて行ってしまった。
「秀人も来んなら良いよ」
何となく秀人の行動に寂しさを覚えた私は、思わずそんな事を口走ってしまう。
しかし言ってから後悔した。立川はニヤニヤした表情のまま私を見つめているし、秀人は振り返って目を丸くして私を見ている。
「かぁー。お前ら分かりやすッ。マジ付き合っちまえば良いのに。戦闘民族のお二人は、意外に奥手なんですなぁ」
立川は笑いながら妙な事を口走り、一人納得したように頷いていた。
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