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「となると、これで三つ目の×が刻み込まれて、三人の死者が出た、という事になるな。もしかして殺し屋の標的ノートでも拾っちまったのかな」
まさかね、とは思いつつ、御薬袋は一人薄ら笑いを見せたが、この名簿されている最後の二段には自分の名字である、御薬袋、が混ざっている事に対しては、一抹ではあるが不安と疑惑が入り交じった複雑な気持ちが交錯していた。
*
電車で予備校に通っている御薬袋。
今、乗車している時間は夕方。上りの電車なので今の時間は混雑しておらず、座席は空席ばかり。だが、御薬袋はあえてつり革片手に直立情態。また目線は古文の単語帳に落としている。古文の単語記憶は電車の通勤最中のみが勉強時間と自身に定めていたので、横目逸らさず単語帳を見開いていた。
それにしても文系に転向してから、我ながら予想以上に真面目に勉強しているな。
電車のドアの窓ガラスに映った自分に不意に気づき、御薬袋はふと己の奮闘ぶりに自賛の念を催した。事実、理系浪人時代の成績とは違って、そこそこの偏差値の伸びが結果として出ているのが、御薬袋の勉強するモチベーションになっていた。
今年は、いや、来年の受験は確実に落とせない。
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