『Order of killing』

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手帖に触れた瞬間、御薬袋はそう直観したため、手帖の汚れも気にせず、中身を開いてみた。手帖の表面自体はそれほど濡れた感はなかったが、中の紙は水分を含んだ形跡があり、所々にメモがしてあった。だが、それらの文字の多くはインクの滲みになっていて、なかなか解読するのが困難であった。 下世話かつ醜聞的な内容の類いでも書いてないかな、といった気持ちで拾った手帖。言わば小学生時代にエロ本を道端で見つけた感覚。その程度の戯れ気分だったので、御薬袋はパラパラと捲った後、その手帖を投げ捨てる予定だった。これから予備校に通う用事もあるので、そんなに俺も暇じゃない、という思いも認(したた)めつつ。 だが、 「ん?」  手帖のページを繰る御薬袋の指が止まった。そして、立ち留まった。  横書き式の手帖の中身はほとんど内容が読みきれず、せいぜい電車の乗り降りの時刻を載せたような記述、または何らかの待ち合わせの時間を僅かに書き留めている程度で、メモの情報量としては少ない。飛び飛びの空欄や空白が目立つページが多い。 だが、最後のページにだけ人名が横書きの行に縦に並び綴ってあった。     
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