『Order of killing』

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『Order of killing』

 昼間の曇天下、御薬袋雅人(みないまさと)は前夜、雨が降ったにも関わらず、特に足元に注意を促す事もなかったために、薄褐色の水溜りに足を嵌めてしまった。防水や撥水の機能のない安物スニーカーではあったが、不幸中の幸い、シューズの中にまでは浸水せず靴下まで濡れる事はなかった。それよりも反射的に下を向いて一瞥した御薬袋が気を止めたのは、水溜りの傍らに落ちていた湿った白革の手帖。 アスファルト上の濁った水に半分浸かった白革の手帖。 カバーが白革といっても薄汚れていて、さらに古びて変色しているので純白とは言い難いが、元は華美な白妙(しろたえ)を基調として高級なツヤ色を施していた面影がある。  御薬袋はそう感じると同時に、どこかで見た記憶があるな? という思いがよぎったため、手帖にまみれる汚濁を気にせず反射的にそれを拾ってしまった。 見た目ほど湿ってはいない。     
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