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「貴方は本当は優しくて真面目な子で、やり場のない理不尽な思いを抱えて不良グループに入って、つらい思いをしていた。でも最終的に、貴方は自分の意思で進路を決めたわ。自分で自分の未来を作っていける強さが貴方にはあって、よかった──」
目を細めた少女のフォルムが不意に揺らぐ。陽一は焦って手を伸ばした。
「待て、あんたは……」
陽一が伸ばした手は虚空を掴んだ。
それまで眼前に佇み、会話していたはずの少女の姿は、もうどこにもなかった。
呆然とする陽一の視界の先で、桜がその白い花弁をただひっそりと風に揺らしていた。
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