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少女との邂逅から1週間後、高校の入学式の前日に中学校の校庭を再訪した陽一は、そこに無残に枯れた1本の桜の木を見つけた。
それは卒業式の日に陽一たちがナイフで傷をつけようとした木だった。
すべての花弁は地に散り、しおれた枝は力無く垂れ、幹の表面はパサパサにひび割れている。その桜の木は、誰の目にも明らかに“死んで”いた。
──この世界を去る。陽一の頭の中で少女の言葉が蘇る。
枯れ果てた桜の木の前で、陽一は動けずに立ち尽くした。
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