0人が本棚に入れています
本棚に追加
関東の小さな町の中学校で起きた1本の桜の木の“死”は、地元の新聞にすら載らないほどのごくささいな出来事だった。
だがこの日を境に、日本中の桜という桜は一斉に枯れ出した。
エドヒガンも、ヤマザクラも、ソメイヨシノも。秋に咲く品種も、冬に咲く品種も。突然の事態に樹木医も植物学者もなすすべが無く、海外へもその流れは伝播し、翌年の春が来るまでにサクラ亜属は悉く死滅していった。
1本の桜の木の“死”から1年後、桜という植物の存在は地球上から完全に消え失せたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!