Ｓの自尽

unknown suicide

　──この支配からの、卒業。かつてそう歌ったミュージシャンがこの世を去ったのは春だったか。……春と言っても、桜が咲いている頃のことだったかは知らないが。

　温かいとも冷たいともつかない曖昧な温度の微風が吹く曇天の下、数日前に卒業したばかりの中学校の校庭に咲く満開の桜の木の下に佇みながら、陽一（よういち）はふと脳内に浮かんで消えた歌詞とそれを歌った歌手の末路について束の間思いを巡らせた。